同じ姿勢を長時間続けたり、無意識に特定の筋肉を酷使すると、筋肉が硬くなってしまいます。このような状態でストレッチをしても効果がありません。硬くなった筋肉は、リフレッシュさせることが大切です。
筋肉をケアする、鍛えるというと、スポーツ選手の専売特許のように思われますが、筋肉は、身体を動かす、姿勢を保つ、エネルギーを消費するなどの役割があります。
1日の消費カロリーの約70%は、基礎代謝によるもので、筋肉を中心に消費されます。ですから、同じ体重でも体脂肪率が低く、筋肉量の多い人の方が基礎代謝は高くなります。
この事から、筋肉を増やすことが基礎代謝を高め、結果として体脂肪を減らし、引き締まった身体をつくると言われるわけです。ところが、いきなり筋肉を使っても、実は、なかなか成果があがらないのです。
マッスルケアは、毎日の積み重ねで、身体を整えていくものです。その日の疲れは、その日に取ることを目標に、続けてみてください!
人間の身体にもっとも負担のかからない姿勢は、直立して、横から見たときに、耳・肩・腰・ひざ・くるぶしが、まっすぐ一直線になっている状態と言われています。これは、人間の身体が地球の重力に対して、最も抵抗が少ない状態です。
しかし、私たちは、生活環境や職場環境、職種などによって、同じ姿勢を強いられていたり、また個人のクセなどによって、無意識に特定の筋肉を酷使しています。
そのような恒常的な環境の中で、姿勢のバランスをとるために、毎日繰り返すパターン化された動作や、これを維持するために特定の筋肉を緊張させ続けることが、筋肉の柔軟性をなくします。
その結果、骨格のバランスに影響を与え、緊張することが少なくなってしまった弱い筋肉をつくってしまうことになるのです。
これらは身体の前後、左右、対角に位置している対応しあう筋肉のどちらかが、硬く短くなると、反対側の筋肉がゆるみ、引き伸ばされ、シーソーのように拮抗して起こります。
ひとつ例をご紹介しましょう。
太ももの裏側にハムストリングスという筋肉郡があります。このハムストリングスが短くなると、骨盤が後ろに傾きます。
すると本来S字であるべき背骨が、バランスをとるために前に曲がり、俗に言う猫背の状態の元をつくります。
猫背になると、おなかの筋肉がたるみ、結果として、腰のくびれがなくなってしまいます。このように、筋肉と骨格は、密接に連動しています。
ハムストリングスが短くなる → 骨盤が後ろに傾く → 猫背になる → おなかの筋肉がたるむ → 腰のくびれがなくなる



左:骨盤前傾、中:正常、左:骨盤後傾
筋肉は、筋繊維という細い筋肉が束になったもので、この束をまとめているのが筋膜です。筋膜には、無数の毛細血管があり、血液が流れています。そして、筋肉は、「縮む」「伸びる」を1セットとしたポンプ運動によって、溜まった老廃物を血管に排泄していきます。
筋肉が硬くなった状態は、筋肉が縮んだ状態で、筋肉中に多くの老廃物を溜め込んでいます。この溜まった疲労物質は、排出しなくてはいけないのですが、柔軟性のなくなった筋肉ではスムーズにポンプ運動が機能しません。そこでストレッチが必要となるわけです。
ところが、この縮んだ筋肉を急激に引き伸ばすと、筋肉が本能的に筋肉自身をまもろうとする性質(筋性防御)によって、筋肉は逆に硬くなってしまいます。
また、筋肉を包んでいる筋膜は、強く引き伸ばされる力に弱いため、急激なストレッチによって傷つくと、その修復のためにさらに厚みを増し、硬くなってしまうのです。このような悪循環をおこしてしまうストレッチ・システムではなかなかいい結果は得られません。
硬くなった筋肉は、まず筋肉中の疲労物質をポンプ運動によってきちんと排出し、リフレッシュさせることが非常に大切です。
そしてリフレッシュした状態の筋肉に、無理のないストレッチをしてあげることで、しなやかな筋肉に整え、健康な筋肉がつくられます。ひいては、筋肉によって支えられている臓器や骨格も正しい位置に納まり、美しいプロポーションに整えます。
私のプログラムに興味をもって、実行していただいている方からは、「ウエストラインにくびれがでてきた」「O脚に変化が出てきた」という声をいただきます。きちんとケアすれば、かならず身体は応えてくれます。
筋肉の疲れは、その日のうちに取り除く。毎日数分間でもいいので、筋肉をケアするマッスルケアの正しい方法を身につけていただきたいと思います。
Photographer : Hitoshi Takabayashi / Photo Office SHOT
監修 / 整体師・鍼灸師 尾上 和正